リーグレポート
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AI時代の起業の科学から、メタマテリアル電波対策、農業の病害虫予測AIまで。第3回「リーグアカデミー」の模様をレポート ― 2026年度 第3回リーグアカデミーレポート―

グローバル生存戦略から、子どものネット防犯、“宇宙開発“発の暗黙知可視化まで。

2026年9月2日、ICTスタートアップリーグにおいて、採択スタートアップの事業成長を強力に支援する実践的な学びの場である第3回「リーグアカデミー」が開催された。本プログラムは、スタートアップの経営陣が直面する課題に対し、すぐに実務で使える実践的な知識を提供することを目的としている。

リーグアカデミーは大きく2部構成となっており、第1部の講演では「AI時代の企業の勝ち筋」をテーマに、数多くのスタートアップを支援してきた株式会社ユニコーンファームの田所雅之氏による講演が行われた。また、続く第2部の「バリューアップセッション」では、特殊な技術で室内の電波環境を改善する英幸テクノ株式会社と、農作物の病害虫発生を予測するAIアプリを展開する株式会社ミライ菜園の2社が登壇した。

本稿では、第1部の講演によるAI時代の生存戦略の要点と、第2部のバリューアップセッションにおける有識者と採択者との熱いやり取りを詳細にレポートする。

第1部:講演「AI時代のMOAT戦略と起業の科学」

田所雅之氏(株式会社ユニコーンファーム 代表取締役CEO) 田所雅之氏(株式会社ユニコーンファーム 代表取締役CEO)

セッションの前半は、第3回リーグアカデミーの講演としてスタートした。今回は株式会社ユニコーンファーム代表取締役CEOの田所雅之氏が登壇した。田所氏は、AIの進化によって劇的に変化したスタートアップの戦い方と、AI時代だからこそ重要になる「MOAT(城の堀=参入障壁・競争優位性)」の築き方について熱弁を振るった。

AIがもたらした「プロダクションコスト」の低下

田所氏はまず、インターネットの普及とAIの登場がビジネスに与えた本質的な違いについて解説した。インターネットやスマートフォンの登場は、人々の「コミュニケーションコスト」を限界まで下げたが、現在の生成AIの進化は「プロダクション(制作・開発)コスト」を劇的に下げているという。

かつてのスタートアップは、最初のプロダクト(MVP)を作るために数千万円のシード資金を調達し、エンジニアを雇うという「Jカーブ(最初にお金と時間をかけて後から回収するモデル)」を描く必要があった。しかし現在では、AIツールを活用することで、資金やフルタイムのメンバーがいなくても、個人やごく少数のチームで素早くPMF(プロダクト・マーケット・フィット)に到達する「μ(ミュー)カーブ」を描けるようになった。FTE(フルタイム従業員)を増やさずにMRR(月次経常収益)を伸ばす「ソロプレナー(一人起業家)」も増加しており、起業のハードルは劇的に下がっていると指摘した。

競争優位性(MOAT)を築く「オセロの四隅」となる4要素

誰もが簡単にプロダクトを作れるようになった結果、単なるAIツールの提供だけでは競争優位性(MOAT)を築くことが難しくなっている。田所氏は、AI時代に勝ち残るためには「オセロの四隅」を取るような戦略が必要であるとし、以下の4つの要素を挙げた。

①ドメイン知識(現場の暗黙知とユーザーインサイト)
インターネット上で検索できるパブリックな情報や、企業内のマニュアルとして言語化されているナレッジベースは、すでにAIが学習済みであり差別化要因にはならない。勝ち筋は、ネット上に落ちていない「現場の暗黙知」を獲得し、データ化することにある。 田所氏は具体的な事例として、解体業者のプラットフォームを展開する「Crassone(クラッソーネ)」を挙げた。どの解体業者がどんな重機を持ち、どのような現場に強いかといった情報はネット上には存在しない。同社は自ら現場の懐に入り込み、業者の得意・不得意をデータ化することで圧倒的な競争力を築いた。また、商業施設などの落とし物管理業務をBPOで請け負ってデータ化する「Find(ファインド)」や、物流現場の非構造データを泥臭くマッピングして急成長している米国のAIスタートアップ「HappyRobot」の事例も紹介された。

②事業開発 / AI活用 PdM
現場の暗黙知をただ集めるだけでなく、それをAIと掛け合わせてどのように事業化し、プロダクトとして落とし込むかという「事業開発力(PdM)」が不可欠となる。

③領域の関心度(実存的関心・当事者意識)
技術的な優位性がすぐに模倣される時代において、「なぜ自分がこの課題を解決しなければならないのか」という起業家自身の「実存的関心(自己アイデンティティ)」が重要になる。イーロン・マスクが私財を投じてSpaceXやテスラを立ち上げ、何度も破産の危機に瀕しながらも成功を収めたように、自らが強烈な課題感を持ち、当事者として問題解決に執念を燃やせるかどうかが勝負を分ける。

④ネットワーク効果
AIがどれほど進化しても変わらないビジネスの原理原則が「ネットワーク効果」である。参加者が増えれば増えるほど、そのサービスの価値が高まる仕組みをどう構築するかが問われる。

AI時代も変わらない「ネットワーク効果」の威厳

田所氏は最後に、この「ネットワーク効果」についてさらに深掘りした。Facebookの初期戦略を引き合いに出し、最初から全米展開を狙うのではなく、まずはハーバード大学をはじめとするアイビーリーグといった特定のコミュニティで圧倒的なシェア(75%以上)を獲得する「局地戦」を制し、そこからフライホイール(弾み車)を回して他の大学へ広げていくことでネットワーク効果を最大化させた事例を紹介した。

また、マッチングビジネスにおいて流動性が生まれる臨界点(ティッピングポイント)の重要性も語られた。初期の鶏と卵の問題をいかにして解決し、ネットワーク効果が自律的に回り始める状態を作るかがスケールの鍵になると指摘した

【第1部 講演のまとめ】

第1部の講演では、AIによる開発コストの劇的な低下によって「起業の民主化」が進む中、スタートアップがいかにして競争優位性(MOAT)を構築すべきかという戦略が示された。誰もが容易にプロダクトを作れる時代だからこそ、ネット上に存在しない泥臭い現場の「暗黙知」を自らの足で獲得するアプローチや、AIを活用した事業開発力、起業家自身の強烈な当事者意識、そしてネットワーク効果の構築といった要素が不可欠である。参加した起業家たちにとって、自社の事業戦略を見つめ直すための非常に実践的な羅針盤となるセッションであった。

第2部:バリューアップセッション 登壇スタートアップの事業展望とフィードバック

第1部の講演に続き、第2部では「バリューアップセッション」が行われた。本セッションには、ハードウェアとAIソフトウェアという全く異なるアプローチで社会課題の解決に挑む採択者2者が登壇し、有識者との間で熱い議論が交わされた。

メタマテリアルで室内の電波環境を改善するスタートアップ:英幸テクノ株式会社

英幸テクノ株式会社 代表取締役  安川昌昭氏 英幸テクノ株式会社 代表取締役 安川昌昭氏

最初に登壇したのは誘電体と光学技術を用いて屋内の電波環境を改善するプロダクトを開発する英幸テクノ株式会社の安川氏である。同社には、事業戦略やパートナーシップ構築に長けた専門家がキャディとして支援している。

電波を遮断するエコ住宅の課題と、通信インフラへの影響

安川氏は、政府の補助金等により断熱効果の高い省エネ住宅が普及する一方で、使用される断熱材やLow-Eガラスが5Gなどの電波を遮断してしまい、屋内で通信が途絶えるという新たな社会問題が発生していると指摘した。現在、新築住宅の8〜9割やリノベーションの多くで断熱効果の高い建材が使われており、「断熱イコール断電波」という状況が生まれている。これにより、台風や地震などの災害時に屋内で5G電波が使えず、110番や119番といった緊急電話がかけられないリスクが生じている。

これまでは、屋内の通信環境を改善するために高額な中継機(リピーター)の設置や、壁への穴あけ工事、電源の確保が必要であった。通信キャリアにとっては電波不感地帯を解消するための基地局増設が莫大なコストと消費電力の増加を招き、建材メーカーは「断熱効果はそのままに、電波に優しい建材」の開発という新たな課題に直面している。

窓ガラスに貼るだけの「ナミゲート」と多様な実証実験(POC)の成果

同社が開発した技術「ナミゲート」は、光学技術に基づいた誘電体部材を窓ガラスに両面テープで貼り付けるだけで、あたかもそこに窓ガラスが存在しないかのように電波の仮想的な通り道を作る画期的なものである。電源も不要であり、後付けで安価に設置できる。

プレゼンテーションでは、小規模な実証実験(POC)の成果が複数紹介された。愛媛CATVでの5G通信テストでは、窓を閉めて電波が入りにくくなった環境でも、ナミゲートを取り付けることで電波強度が元に戻り、通信速度が回復することを確認した。また、幼稚園の送迎バスにおける園児の置き去り防止を目的とした自動車用ミリ波センサーのテストでは、センサーを隠すパネルの裏にナミゲートの技術を適用することで、2m先の小さな人形の微かな呼吸の動きすらも正確に検知できるようになったという。

広がる市場ポテンシャルと、資金調達・販売戦略の壁

この技術は通信用途だけでなく、車内の園児置き去り防止用ミリ波センサーのカバーへの応用や、スマートフォンの背面ガラスにおける電波反射防止など、幅広い活用可能性を秘めている。とくにスマートフォンの背面に使われる強化ガラスでの電波反射による損失を、アクセサリーとしてナミゲートを取り付けることでゼロにできる可能性があり、将来的に100億円規模の売上を目指している。

安川氏からは、今後の事業拡大に向けて、シード期における大型資金調達を見据えた戦略や、革新的な技術の価値を投資家にどう分かりやすく伝えるか、さらに大規模な実証実験の推進体制や最適なターゲット市場の選定など、事業をスケールさせるための具体的な戦略について相談が投げかけられた。また、販売戦略として、通信キャリアや建材メーカーのどこからアプローチすべきか、断熱基準の厳しい北米や欧州への海外展開、電波不感地帯に対する一般層の意識の低さをどう啓発するかといった課題も共有された。さらに、電子決済が必須となるコンビニエンスストア、ビジネス環境が問われるホテル、通信環境の改善ニーズが高い集合住宅などにおいて、新たなPOCの場を提供してほしいと呼びかけた。

有識者とのやり取り:ユースケースの深掘りと「ロケットスタート」戦略

平英晴氏(左:選考評価委員)、田所雅之氏(中:株式会社ユニコーンファーム)、上井智寛氏(右:支援機関 株式会社奥村組) 平英晴氏(左:選考評価委員)、田所雅之氏(中:株式会社ユニコーンファーム)、上井智寛氏(右:支援機関 株式会社奥村組)

プレゼンテーションに対し、有識者からは技術の独自性に対する評価とともに、ビジネス展開に向けた具体的なアドバイスが多数寄せられた。

資金調達に関する相談に対しては、ある有識者からシードラウンドにおけるバリュエーション(企業価値評価)のイメージについて質問がなされた。安川氏が今後の調達の展望を語る一方で、有識者からは『過去の調達時から現在に至るまでに大きくバリューアップしていることを踏まえ、パートナー開拓などの実績をしっかりと示し、企業価値向上の根拠を投資家に論理的に説明することが調達の鍵になる』との示唆が与えられた。

ターゲット選定については、ホテルやコンビニといった商業施設でのユースケースをより深掘りすべきだという意見が出された。ビジネスパーソン向けのホテルで通信環境が悪いことは致命的なサービス低下に直結するため、そこを改善することでどれだけのコスト削減や顧客満足度の向上に寄与するかというROI(投資対効果)を明確に示すことが求められた。

販売経路の開拓においては、建材メーカーにおける製造プロセスの変更や新仕様導入のハードルを考慮し、まずは『売る側・施工する側(家電量販店、ホームセンター、リフォーム業者など)』と組むアプローチも有効であるというアドバイスがなされた。

さらに、技術の有用性を市場に認知させるための戦略として、高額なB2Bの商談に時間をかけるだけでなく、1万円程度の安価なお試しキットを作成し、一般ユーザーに直接販売してボトムアップで認知を広げる「ロケットスタート」のアプローチも提案された。ユーザーが自ら効果を実感し、「なぜ自宅にあるのにホテルにはないのか」と声を上げる状態を作ることで、大手企業への導入を後押しするというダイナミックな戦略である。また、会場にいた建設業界の支援機関からは、半透明コンクリートの研究事例が共有され、新たな素材研究とのコラボレーションの可能性も提示されるなど、実践的なマッチングの場としても機能した。

農作物の病害虫発生を予測するAIドクターアプリ「TENRYO」:株式会社ミライ菜園

株式会社ミライ菜園 代表取締役 畠山友史氏 株式会社ミライ菜園 代表取締役 畠山友史氏

続いて登壇したのは、筑波大学発のアグリテックスタートアップである株式会社ミライ菜園の畠山氏だ。同社には、事業戦略や新規事業開発に長けた専門家がキャディ(伴走者)として支援に入っている。

独自ビッグデータと気象AIによる「高精度な病害虫予報」の仕組み

畠山氏は、農作物の健康を守るAIドクターアプリ「TENRYO(テンリョウ)」の事業概要について解説した。

同アプリは、各地の気象データと、同社が独自に収集・蓄積した病害虫の「発生履歴ビッグデータ」を掛け合わせることで、病気や害虫の生態モデルを構築・解析する「病害虫版の天気予報」である。実際の発生事実に基づいて高精度なモデルを生成するため、圃場単位での細かな予測が可能となっている。

その予測精度は非常に高く、「どのタイミングでどの害虫・病気がどれくらい発生するか」を1週間以内の誤差で特定できるレベルに達している。すでに実証段階を終えて実運用フェーズに入っており、全国でJAや生産者が導入。実証に参加した農家では単収(単位面積あたりの収穫量)が向上するなど、確かな被害軽減効果を実証している。

「情報提供止まり」の壁と、アプリのみでは市場が小さいというビジネス上の課題

着実な成果を上げる一方で、畠山氏は現状のビジネスモデルが抱える構造的な限界について明かした。

①先行投資に対する心理的ハードル
効果を実感できるのが「収穫時(1作の終わり)」であるため、先行投資としての納得感を得られにくい。新しいITツールの導入に対し、先行投資としてのハードルを感じる農家も少なくないため、月額課金という現在のモデルにはさらなる工夫が必要である。

②獲得可能な市場規模(TAM)の限界
予報アプリの単体販売にとどまるモデルではアプローチできる国内市場に一定の限界が見込まれるため、事業をさらに大きくスケールさせるための次なる打ち手が課題として挙げられた。

リスク予測を起点とした「多段階のビジネスモデル」

こうした課題を突破するため、同社はリスク予測(予報)を「病害虫対策の入り口・起点」と位置づけ、その先のプロセスまでをワンストップで提供する新たなビジネスモデルへの転換を提示した。

行政の「病害虫発生予察事業」との連携に向けた相談

セッションの最後、畠山氏から有識者陣に向けて、行政(農林水産省および各都道府県の病害虫防除所)が行っている「病害虫発生予察事業」との連携は進めていくことが可能か、質問があった。

現在、行政が行う予察事業は、職員による現地巡回やデータ収集に基づき、過去1ヶ月の発生動向をまとめたチラシや月報を発行する形が主流となっている。しかし、構造上どうしても「事後報告(先月大発生したという通知)」になりがちであり、被害を受けた後の農家にとっては参考情報に留まってしまう側面がある。

同社はすでに「みどりの食料システム戦略技術カタログ」や果樹カメムシ対策の取り組み事例に掲載されるなど、認知と評価を高めてきた。未来が事前に予測できる「TENRYO」の技術こそ行政の予察事業が本来目指す姿を補完できると考え、国や自治体の事業と連携を進めていくための最適なアプローチや最短経路について意見を求めた。

有識者とのやり取り:プラットフォーム化への転換と、他市場への横展開の可能性

赤城規史氏(左:鹿島建設株式会社)、灰田俊也氏(中:選考評価委員)、谷元樹氏(右:選考評価委員) 赤城規史氏(左:鹿島建設株式会社)、灰田俊也氏(中:選考評価委員)、谷元樹氏(右:選考評価委員)

同社の事業に対しては、ビジネスモデルの根本的な見直しを迫る厳しくも本質的なフィードバックが行われた。

まず、行政(農林水産省や防除所)へのアプローチについては、既存の予察事業の体制や現状を尊重したうえで提案を行うべきだとアドバイスされた。行政が現場で足で稼いだ一次情報には確かな価値があり、それを補完し、より優れた結果を出すためのパートナーとしてのスタンスでデータ提供や協力を仰ぐアプローチが最も有効であると示唆された。

ビジネスモデルの課題に対しては、中小規模の農家に月額課金でITツールを導入してもらう現在のモデルは限界があるとの指摘がなされた。有識者からは、アプリをを農家やJAに「完全無料」で提供して一気に面(ユーザー層とデータ)を獲得し、プラットフォームを構築したうえで、農業関係のメーカーや関連企業から広告費や協賛金を得るモデルへと転換すべきだという強力な提案が行われた。これは誰もが使わざるを得ないインフラとなり、ネットワーク効果を効かせることが先決であるという指摘である。

また、そのための泥臭いアプローチとして、机上の戦略だけでなく、全国のJAや生産者の懐に入り込む徹底した現場主義の重要性も語られた。さらに、会場に来場していた赤城氏(鹿島建設株式会社)からは、ターゲットを中小農家から、働き方改革(時間外労働の上限規制)への対応で効率化が急務となっている「大規模農業法人」へとシフトし、実証実験の協力を仰ぐべきだとの実践的な意見も寄せられた。

加えて、全く別のアングルからの事業展開として、農作物に限定せず、より単価が高く市場規模も大きい「シロアリ」や「ゴキブリ」「ネズミ」などの衛生害虫駆除市場(ペストコントロール)への横展開も提案された。特にシンガポールなどの海外では、敷地内での蚊などの発生に対する罰金制度が厳しいため、予測技術のニーズが極めて高いというグローバルな視点からの斬新なアイデアも共有された。

総括:プラットフォームの構築と、社会実装への覚悟

福田正氏(左:ICTスタートアップリーグ運営会合長)、野間邦夫氏(右:総務省) 福田正氏(左:ICTスタートアップリーグ運営会合長)、野間邦夫氏(右:総務省)

セッションの最後には、運営会合長 福田氏からの総括が行われた。総括では、総括では、今回のバリューアップセッションを通じて、「認知の拡大」と「ネットワーク効果の創出」がいかに重要であるかが改めて強調された。優れた技術や予測AIを持っていたとしても、それを使うユーザーがいなければ価値は生まれない。そのためには、目先の収益化を急ぐのではなく、まずは初期導入のハードルを下げてでも圧倒的なシェアとデータを獲得し、プラットフォームとして不可欠な存在になることの重要性が力説された。

また、技術の完成度を誇るだけではなく、トップ層のネットワークに飛び込み、経営層に直接アプローチして実証実験の場をもぎ取るような「ハングリーな営業力」と「ロケットスタート」の覚悟がスタートアップには求められるとエールが送られた。

総務省の野間氏からは、本セッションのような熱量で、新しいことに挑戦する起業家を多角的に支援・議論する環境の素晴らしさについて感想が述べられた。そして、このスタートアップ支援事業が「社会をどう変革したか(アウトカム)」を明確に示せるよう、参加企業の中から一つでも多くの圧倒的な成功事例が生み出されることへの強い期待が語られた。

ハードウェアのアプローチで電波環境のインフラ改善に挑む英幸テクノ株式会社と、データとAIを武器に農業の効率化を目指す株式会社ミライ菜園。有識者からの厳しくも本質的なフィードバックと実践的なアイデアを受け、両社が今後どのように事業モデルを転換し、スケールさせていくのか、引き続きその動向を注視していきたい。

■ICTスタートアップリーグ
総務省による「スタートアップ創出型萌芽的研究開発支援事業」を契機に2023年度からスタートした支援プログラムです。
ICTスタートアップリーグは4つの柱でスタートアップの支援を行います。
①研究開発費 / 伴走支援
最大2,000万円の研究開発費を補助金という形で提供されます。また、伴走支援ではリーグメンバーの選考に携わった選考評価委員は、選考後も寄り添い、成長を促進していく。選考評価委員が“絶対に採択したい”と評価した企業については、事業計画に対するアドバイスや成長機会の提供などを評価委員自身が継続的に支援する、まさに“推し活”的な支援体制が構築されています。
②発掘・育成
リーグメンバーの事業成長を促す学びや出会いの場を提供していきます。
また、これから起業を目指す人の発掘も展開し、裾野の拡大を目指します。
③競争&共創
スポーツリーグのようなポジティブな競争の場となっており、スタートアップはともに学び、切磋琢磨しあうなかで、本当に必要とする分の資金(最大2,000万円)を勝ち取っていく仕組みになっています。また選考評価委員によるセッションなど様々な機会を通じてリーグメンバー同士がコラボレーションして事業を拡大していく共創の場も提供しています。
④発信
リーグメンバーの取り組みをメディアと連携して発信します!事業を多くの人に知ってもらうことで、新たなマッチングとチャンスの場が広がることを目指します。

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