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車載バッテリーの劣化を3分で可視化。次なる事業成長を探る「バリューアップセッション」の最前線 ― 2026年度 第2回プレミアムバリューアップセッションレポート―

車載バッテリーの劣化を3分で可視化。次なる事業成長を探る「バリューアップセッション」の最前線

中古車市場で不透明なまま流通している「車載バッテリーの劣化度」を、車両から取り外さずにわずか3分で高精度診断する技術を持つプロスペクティブテクノロジーズ株式会社。

有識者とICTスタートアップリーグの採択者が直接議論を交わし、事業をブラッシュアップする実践的な育成の場「バリューアップセッション」。2026年度第2回目の開催となる今回も、独自の技術で社会課題の解決に挑むスタートアップが登壇した。また本リーグでは、単なるアドバイザーにとどまらず、経営者とともに悩み事業成長を実行支援する専任の伴走者「キャディ」が1社に1名配置される新たな体制が敷かれている。

本稿では、採択者と有識者との間で事業モデルの根本を問うような率直な議論が繰り広げられたセッションに密着し、採択者が次の一手を見出す軌跡をお届けする。

車載バッテリーの「劣化度」をわずか3分で高精度診断:プロスペクティブ・テクノロジーズ株式会社

プロスペクティブ・テクノロジーズ株式会社 共同創業者/代表取締役 渋野雅告氏 プロスペクティブ・テクノロジーズ株式会社 共同創業者/代表取締役 渋野雅告氏

セッションに登壇したのは、電磁劣化診断ソフトウェアの開発に特化したプロスペクティブテクノロジーズ株式会社だ。共同創業者/代表取締役の渋野氏が、ハイブリッド車やEV(電気自動車)の中古車市場が抱えるリスクを解消する同社の取り組みについて紹介した。

「ガチャ状態」のハイブリッド中古車市場に、確かな基準をもたらす

現在、日本の中古車市場ではハイブリッド車が数多く流通しているが、搭載されているバッテリーの劣化度は外からでは分からず、「良い状態のものが乗っているか、悪いものかはガチャ状態」になっていると渋野氏は指摘する。日本の車検制度でもバッテリーの劣化度は点検項目に入っておらず、購入後に高額な交換費用が発生するリスクが課題となっている。

この課題に対し、同社はバッテリーを車両から取り外すことなく(オンボード)、OBD2ポートに専用のデバイスを挿して短い放充電を行うだけで、約3分間で高精度に劣化度を診断できる特許技術を開発した。既存の診断手法が単なる電圧の変化(SOC)しか見ていないのに対し、同社は変化量を独自のアルゴリズムで解析することで、実用的で精度の高いSOH診断を実現している。

グローバル事業推進のプロ(キャディ)と共に、海外展開と標準化を目指す

事業展開としては、大手の中古車情報サイトや輸入業者と連携し、B2Bモデルでの普及を目指している。将来的には、自動車だけでなく、定置用の蓄電ステーションや空港の特殊車両など、バッテリーが使われるあらゆる領域への応用(プラットフォーム化)を視野に入れているという。

また、海外展開を加速させるため、30年以上のPdM/PM経験をもち、グローバルで技術開発・事業推進をリードしてきた専門家がキャディとして伴走している。日本国内での基盤構築と並行して、初期段階から世界市場を意識した戦略策定が進められている。

有識者からのフィードバック:マニア層を巻き込むコミュニティ形成とブランド化

灰⽥俊也氏(左上:選考評価委員)、松田信之氏(右上:選考評価委員)、高野秀敏氏(左下:選考評価委員)、垣貫真和氏(右下:運営会合) 灰⽥俊也氏(左上:選考評価委員)、松田信之氏(右上:選考評価委員)、高野秀敏氏(左下:選考評価委員)、垣貫真和氏(右下:運営会合)

オンラインで参加されている有識者も含め、事業の認知拡大と業界標準(デファクトスタンダード)の獲得に向けた具体的なアイデアが多数寄せられた。「B2B展開だけでなく、車好きの一般ユーザー(アーリーアダプター)を巻き込んだ診断イベントを実施し、SNS等での認知を広げるべき」といったマーケティング戦略が提案された。

さらに、「インテル入ってる」のような分かりやすいブランドシール(診断年や劣化状態を色分けしたステッカー)を作成し、独自の基準を先んじて世の中に浸透させていくべきだとのアドバイスも送られた。加えて、「電動化が進む航空業界(エアライン)など、バッテリーの信頼性が人命に直結するクリティカルな領域へもアプローチしてみてはどうか」といった、新たな市場開拓のヒントも提示された。

総括:テクノロジーの追求とビジネス成長の両立へ

福田正氏(左:ICTスタートアップリーグ運営会合長)、野間邦夫氏(右:総務省) 福田正氏(左:ICTスタートアップリーグ運営会合長)、野間邦夫氏(右:総務省)

セッションの最後には、ICTスタートアップリーグ運営会合の会合長である福田氏らが総括を行った。福田氏は、「リーグという名のもとに、単発のイベントで終わらせるのではなく、年間を通じてスタートアップを支援していくことが重要だ」と述べ、委員とスタートアップ双方に継続的なコミュニケーションを求めた。

また、総務省の野間氏からは、「本事業は総務省からの資金で研究開発を支援するものであり、テクノロジーの追求(ICT観点)と、ビジネスとしての成長の両立をしっかりと示してほしい」との期待が語られた。

バッテリー劣化のブラックボックスを独自の解析技術で切り拓くプロスペクティブテクノロジーズ株式会社。有識者からの実践的なフィードバックとキャディの伴走支援を受け、同社が今後どのように事業をスケールさせていくのか、引き続きその動向を注視していきたい。

■ICTスタートアップリーグ
総務省による「スタートアップ創出型萌芽的研究開発支援事業」を契機に2023年度からスタートした支援プログラムです。
ICTスタートアップリーグは4つの柱でスタートアップの支援を行います。
①研究開発費 / 伴走支援
最大2,000万円の研究開発費を補助金という形で提供されます。また、伴走支援ではリーグメンバーの選考に携わった選考評価委員は、選考後も寄り添い、成長を促進していく。選考評価委員が“絶対に採択したい”と評価した企業については、事業計画に対するアドバイスや成長機会の提供などを評価委員自身が継続的に支援する、まさに“推し活”的な支援体制が構築されています。
②発掘・育成
リーグメンバーの事業成長を促す学びや出会いの場を提供していきます。
また、これから起業を目指す人の発掘も展開し、裾野の拡大を目指します。
③競争&共創
スポーツリーグのようなポジティブな競争の場となっており、スタートアップはともに学び、切磋琢磨しあうなかで、本当に必要とする分の資金(最大2,000万円)を勝ち取っていく仕組みになっています。また選考評価委員によるセッションなど様々な機会を通じてリーグメンバー同士がコラボレーションして事業を拡大していく共創の場も提供しています。
④発信
リーグメンバーの取り組みをメディアと連携して発信します!事業を多くの人に知ってもらうことで、新たなマッチングとチャンスの場が広がることを目指します。

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