ICT技術を活用して水産資源の保護に取り組む株式会社フィッシュパス(本社:福井県坂井市、代表取締役:西村 成弘)は、総務省「ICTスタートアップリーグ」採択事業の一環として、環境DNA(eDNA)を活用したクマの生息調査を秋田県にて正式に開始しました。
本プロジェクトは、実際にクマ被害に遭われた秋田県の地域住民の協力のもと、これまで魚類調査で培ってきた環境DNA技術を初めて哺乳類(クマ)に応用したものです。「駆除」一辺倒ではない、科学的根拠に基づいた「共存」への道を切り拓く新たな挑戦となります。
※2025年12月11日 更新: 株式会社フィッシュパスより正式なプレスリリースが配信されたため、開発経緯や詳細情報を追記・更新しました。
近年、全国的にクマによる人的被害や農作物被害が増加し、地域住民の不安が高まっています。しかし、従来の調査手法である目視や痕跡(足跡、糞など)への依存では、正確な個体数や移動経路、生息密度を把握することに限界がありました。「いつ、どこに出るかわからない」という見えない恐怖に対し、新たな科学的アプローチが求められていました。
この課題に対し、フィッシュパスは最先端の環境DNA技術を導入しました。 この技術は、コップ1杯程度の川の水を採取し、そこに含まれる環境DNAを分析することで、その水域にどのような生物が生息しているかを高精度に判定するものです。
今回の調査手法では、採水地点からおよそ1km上流の範囲に生息するクマのDNAを検出できる可能性があります。これにより、危険な山中に深く立ち入ることなく、クマの侵入状況や生息密度を「面」として科学的に可視化・評価することが可能になります。
本技術の核となる「クマ専用プライマー(DNA判定キット)」の開発には、ある一人の協力者の存在がありました。 秋田県で菓子店を営む湊屋啓二(※1)さんです。湊屋さんは2年前、自宅車庫でクマに襲われ、頭部に重傷を負いました。
「同じような痛ましい被害を防ぎたい」 その切実な願いから、湊屋さんは調査への全面協力を決意。ツキノワグマの肉片を提供いただき、それを基にクマ専用のプライマーを作成することに成功しました。これは、被害当事者の強い想いと最先端技術が融合して生まれたプロジェクトです。
(※1)湊屋啓二さん
秋田県で菓子店を営む湊屋啓二さんは、2年前、自宅車庫のシャッターを開けた際に中に入り込んでいたクマと遭遇し、顔や腕、胴体に深い傷を負い、頭皮がめくれて頭蓋骨が露出する重傷を負いました。
今後は、現在の生息状況調査に加え、フィッシュパスが全国の漁協と築いてきたネットワークを活かし、過去に保存された河川水の再解析も進める予定です。過去のデータを紐解くことで、クマの行動域の変化を時間軸で追跡することが可能になります。
クマの出没に対し「駆除」以外の選択肢が模索される中、フィッシュパスは環境DNA技術でクマの存在を“見える化”し、科学的根拠に基づいた対策や保全政策への活用を提案していきます。人と自然、そして野生動物が適切な距離を保ちながら共存できる未来に向け、新たな科学的基盤の構築を目指します。
■ICTスタートアップリーグ
総務省による「スタートアップ創出型萌芽的研究開発支援事業」を契機に2023年度からスタートした支援プログラムです。
ICTスタートアップリーグは4つの柱でスタートアップの支援を行います。
①研究開発費 / 伴走支援
最大2,000万円の研究開発費を補助金という形で提供されます。また、伴走支援ではリーグメンバーの選考に携わった選考評価委員は、選考後も寄り添い、成長を促進していく。選考評価委員が“絶対に採択したい”と評価した企業については、事業計画に対するアドバイスや成長機会の提供などを評価委員自身が継続的に支援する、まさに“推し活”的な支援体制が構築されています。
②発掘・育成
リーグメンバーの事業成長を促す学びや出会いの場を提供していきます。
また、これから起業を目指す人の発掘も展開し、裾野の拡大を目指します。
③競争&共創
スポーツリーグのようなポジティブな競争の場となっており、スタートアップはともに学び、切磋琢磨しあうなかで、本当に必要とする分の資金(最大2,000万円)を勝ち取っていく仕組みになっています。また選考評価委員によるセッションなど様々な機会を通じてリーグメンバー同士がコラボレーションして事業を拡大していく共創の場も提供しています。
④発信
リーグメンバーの取り組みをメディアと連携して発信します!事業を多くの人に知ってもらうことで、新たなマッチングとチャンスの場が広がることを目指します。
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