「IPOはエグジットではない」名証が語る、スモールIPOという選択肢 ― 第6回スタートアップリーグアカデミーダイジェストレポート―

2025年11月26日、第6回『スタートアップリーグアカデミー』が開催されました。

今回は、運営会合メンバーである、株式会社ガイアックス執行役員の佐々⽊喜徳氏が登壇し、株式会社名古屋証券取引所（以下、名証）の山田純史氏をゲストに迎え、「グロース以外のエグジット戦略」をテーマにトークセッションを実施。バリューアップセッションでは株式会社Nefrontと株式会社Vanishing Companyの2社が登壇し、事業成長に向けた熱いピッチとメンタリングが行われました。

■特別セッション：『グロース以外のエグジット戦略 ―名証という選択―』

トークセッションでは、佐々木氏をモデレーターに、IPO市場の多様性について議論が展開されました。

名証の山田氏は、「名証＝ローカル市場」というイメージを払拭すべく、2000年に地域制限を撤廃しており、現在は東海3県以外の企業の上場も多いことを説明。海外機関投資家中心の東証プライム等とは異なり、名証は「個人投資家」を重視する市場コンセプトを掲げ、日本最大級の個人投資家向けIRイベント「名証IRエキスポ」などで上場後のファン作りを強力にバックアップしている点を強調しました。

また、時価総額100億円を目指す東証グロースに対し、名証ネクスト市場などはより現実的な「スモールIPO」（時価総額数億円〜）が可能である点に言及。IPOをゴール（エグジット）とせず、新たな資金調達の手段と捉えてほしいとし、名証で実績を作り、その後東証へステップアップする事例なども紹介されました。

■株式会社Nefrontによるバリューアップセッション

株式会社Nefrontは、建物の図面や設備情報をAR技術と連携させ、空間上で直感的に管理できるシステムについてピッチを行いました。特にメンテナンス業務の効率化や、将来的なスマートグラス普及を見据えたプラットフォーム構想が語られました。

有識者からは、高い技術力を評価しつつ、「なぜNefrontがこれをやるのか」というビジョン（WHY）をより言語化することで、応援者や採用への求心力が変わるとアドバイスがありました。また、スマートグラスで実現する「未来の当たり前」を視覚的に提示することの重要性が指摘され、具体的なユースケースの魅せ方について議論が交わされました。

■株式会社Vanishing Companyによるバリューアップセッション

株式会社Vanishing Companyは、動物医療における深刻な血液不足を解決する犬猫の供血マッチングアプリ「Blut（ブルート）」についてプレゼンを行いました。代表の土岐氏自身の愛犬の闘病経験から生まれたサービスであり、その社会的意義の高さに会場からも共感の声が上がりました。

有識者からは、ビジネスモデルの持続可能性について活発な意見が出されました。ペット保険と連携した「共助の仕組み」やクラウドファンディング的なアプローチによる収益化の提案に加え、マッチング成立後の「移動手段（ドナーをどう運ぶか）」が最大のハードルになるとし、ドクターカーの導入などオペレーション面での課題解決を促す意見が出ました。また、マッチングプラットフォームとして「どこを起点にネットワークを広げるか」というロジック構築の重要性についても語られました。

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■ICTスタートアップリーグ
総務省による「スタートアップ創出型萌芽的研究開発支援事業」を契機に2023年度からスタートした支援プログラムです。
ICTスタートアップリーグは４つの柱でスタートアップの支援を行います。
①研究開発費 / 伴走支援
最大2,000万円の研究開発費を補助金という形で提供されます。また、伴走支援ではリーグメンバーの選考に携わった選考評価委員は、選考後も寄り添い、成長を促進していく。選考評価委員が“絶対に採択したい”と評価した企業については、事業計画に対するアドバイスや成長機会の提供などを評価委員自身が継続的に支援する、まさに“推し活”的な支援体制が構築されています。
②発掘・育成
リーグメンバーの事業成長を促す学びや出会いの場を提供していきます。
また、これから起業を目指す人の発掘も展開し、裾野の拡大を目指します。
③競争＆共創
スポーツリーグのようなポジティブな競争の場となっており、スタートアップはともに学び、切磋琢磨しあうなかで、本当に必要とする分の資金（最大2,000万円）を勝ち取っていく仕組みになっています。また選考評価委員によるセッションなど様々な機会を通じてリーグメンバー同士がコラボレーションして事業を拡大していく共創の場も提供しています。
④発信
リーグメンバーの取り組みをメディアと連携して発信します！事業を多くの人に知ってもらうことで、新たなマッチングとチャンスの場が広がることを目指します。