リーグレポート
REPORT

スタートアップが大企業と連携する際の重要な視点とは?

マーケットインで築く成長戦略とは? ― 第4回 スタートアップリーグアカデミー ダイジェストレポート―

2025年10月22日、第4回『スタートアップリーグアカデミー』が開催されました。

今回は、運営会合長の福田氏と、ゲストとして招かれた株式会社マーケットエンタープライズ代表取締役社長の小林泰士氏による特別セッションに加え、採択企業2社によるバリューアップセッションが行われ、活発な議論が交わされました。

■特別セッション:『持続可能な社会を実現する最適化商社への取組み』

セッション:『持続可能な社会を実現する最適化商社への取組み』

小林氏のプレゼン前に、運営会合長の福田氏が、現代のマーケティングは従来の学校で教える理論から大きく変化しており、プラットフォーム戦略や「BtoBtoC」の「C」をいかに掴むかが重要であると解説しました。

続いて、ゲストとして株式会社マーケットエンタープライズの小林氏が登壇。『持続可能な社会を実現する最適化商社への取組み』をテーマに、『マーケットイン』の思考でリユース市場に参入し、スタンダードを築き上げた経験を共有しました。

小林氏は、23歳での創業から上場に至るまで、ニッチな領域(当初はECサイトのフラッシュ電池やフリーマーケット運営)からスタートし、ネット型リユース事業へとピボットした経緯を説明。30の買取専門サイト運営、自社物流網の構築、ヤフーやアマゾンとの連携、M&Aによる事業拡大、そして「おいくら」プラットフォームによる行政(自治体)との連携(現在283自治体)など、一貫して市場のニーズを捉え、仕組み化を進めてきた戦略を語りました。

また、リユース市場の成長背景として、人口動態(高齢化による断捨離・終活、空き家問題、離農問題)というマクロな社会課題と直結している点を挙げ、データ分析に基づき海外(特にアフリカ市場)へも展開している現状を紹介しました。

最後に、福田氏が「根拠のある仮説を立て、チャレンジを繰り返すこと」、そして「グレーゾーンを避け、オープンな仕組みを構築すること」が、スタートアップの成長において極めて重要であると締めくくりました。

■Blue Farm 株式会社によるバリューアップセッション

AironWorks株式会社によるバリューアップセッション

Blue Farm 株式会社の代表取締役である青木大輔氏が登壇。耕作放棄地となっている山間地の茶畑が持つサステナブルな価値(CO2削減、生物多様性保全)に着目し、企業の飲料を置き換えることでESG評価向上に貢献するサービス「ChaaS(茶畑 as a Service)」を展開しています。

同社が抱える課題として、事業をスケールさせるためのパートナー戦略(特に大手飲料メーカーとはビジネスモデルが競合しうる点)や、現在の価格(1本120円)で目標売上(20億円)を達成するための計画の解像度を上げたい点が挙げられました。

有識者からは「400年続く茶農家という歴史的背景をもっとアピールすべき」「飲料として売るのではなく、ESGソリューションとしての価値を明確にすべき」「スケールのためには大手流通との連携が不可欠ではないか」など、多角的な議論が交わされました。

■株式会社AtoJによるバリューアップセッション

株式会社AtoJによるバリューアップセッション

続いて株式会社AtoJ 代表取締役COO 冨田信雄氏が登壇。法務省認証の裁判外紛争解決手続(ADR)事業者として、少額の未払い(100万円以下)をオンラインで解決するODRサービス「ワンネゴ」を提供しています。

ただ、他業種(医療、不動産、電力など)への認知度拡大、および事業拡大に伴うセキュリティリスク(フィッシング詐欺など)への対策が課題として挙げられました。

有識者からは、「金融業界のサービサー(債権回収会社)との相性が非常に良いため、連携すべき」「法務省認証が強力な参入障壁だが、競合出現に備えスピードが重要」「『ここ以外は偽物』というブランド価値を確立し、セキュリティ対策と同時に進めるべき」「フリーランス業界の不当請求や買い叩き問題など、新たな市場への展開も期待できる」といった、具体的な連携先やリスク対策に関する提言が行われました。

また、トークセッションに登壇した小林氏が「(自社の)プラットフォーム上の売主・買主間トラブル解決機能として搭載したい」と導入に強い関心を示し、バリューアップにつながる今後の連携も期待されます。

■詳細レポートと当日の熱気をSNSで!

白熱したセッションのさらに詳しい内容は、後日公開予定の詳細レポートでお伝えします。

最新情報は公式X(旧Twitter)でお知らせしますので、ぜひフォローして続報をお待ちください。
公式Xアカウント:https://x.com/startupleaguejp

また、当日のリアルな熱気は、ぜひハッシュタグで検索してみてください!
推奨ハッシュタグ:#スタートアップリーグアカデミー

■ICTスタートアップリーグ
総務省による「スタートアップ創出型萌芽的研究開発支援事業」を契機に2023年度からスタートした支援プログラムです。
ICTスタートアップリーグは4つの柱でスタートアップの支援を行います。
①研究開発費 / 伴走支援
最大2,000万円の研究開発費を補助金という形で提供されます。また、伴走支援ではリーグメンバーの選考に携わった選考評価委員は、選考後も寄り添い、成長を促進していく。選考評価委員が“絶対に採択したい”と評価した企業については、事業計画に対するアドバイスや成長機会の提供などを評価委員自身が継続的に支援する、まさに“推し活”的な支援体制が構築されています。
②発掘・育成
リーグメンバーの事業成長を促す学びや出会いの場を提供していきます。
また、これから起業を目指す人の発掘も展開し、裾野の拡大を目指します。
③競争&共創
スポーツリーグのようなポジティブな競争の場となっており、スタートアップはともに学び、切磋琢磨しあうなかで、本当に必要とする分の資金(最大2,000万円)を勝ち取っていく仕組みになっています。また選考評価委員によるセッションなど様々な機会を通じてリーグメンバー同士がコラボレーションして事業を拡大していく共創の場も提供しています。
④発信
リーグメンバーの取り組みをメディアと連携して発信します!事業を多くの人に知ってもらうことで、新たなマッチングとチャンスの場が広がることを目指します。