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海外のECサイトで見つけた魅力的な商品。しかし「日本発送不可」の文字にがっかりした経験はないだろうか。言語の壁、煩雑な通関、不明瞭な送料・関税…。そんな越境ECのあらゆる“面倒”を、AIでワンクリックで解決するのが株式会社SAZOだ。
ICTスタートアップリーグの支援を受けたことで「信頼」を追い風に、7億円超の大型資金調達を実現した。
しかし、創業者ギルマロ氏が見つめるのは、その遥か先。「AIが起業する時代」「人類史のラストチャンス」――。数学オリンピックを制した異才が描く壮大なビジョンと、成功の裏にあったリーグの支援の全貌に迫る。
まず、SAZOとはどのようなサービスなんでしょうか。
ギルマロ:はい。僕らのサービスは、AIを使って海外のものを本当に簡単に買えるようにする越境ECサービスです。海外から何かを買おうとすると、日本まで送ってくれない「物理的なバリア」とか、言葉が分からない、決済できないみたいな「相対的なバリア」があるんですよね。SAZOは、そういうバリアを全部取っ払ってしまおう、というサービスなんです。
使い方は、すごくシンプルですよ。ユーザーさんは、海外のサイトで見つけた商品のURLをコピペするだけ。そうするとAIがパッと商品情報を翻訳して、関税や送料も全部コミコミの値段を日本円で出してくれる。あとは、いつも使ってる日本のECサイトみたいに、自分の住所を入れて、日本の決済方法で払えば終わりです。
よくある転送代行サービスとどこが違うのでしょう?
ギルマロ:僕らの強みって、ソフトウェアとハードウェア、その両面から課題を解決してるところなんです。まずソフトウェアの面では、さっき言った送料・関税の自動計算とか、AIが通関書類を勝手に作ってくれるとか。ユーザーさんが面倒な計算や入力をする手間が、まったくありません。
さらに、ハードウェア、つまり物理的な物流拠点も自分たちでやってるんです。海外の拠点に届いた商品は、一つ一つ人間と画像認識AIがチームになって検品します。もし注文と違う商品が届いたら、その時点で僕らが責任を持って対応する。だからユーザーさんは、安心して待っててくれればいい。この**「検品・保証」まで全部やる**っていうのが、ただの発送代行との大きな違いですね。こういう手厚いサービスも、AIのおかげでコストを抑えて実現できているんです。
ご自身の体験がサービスのきっかけになったそうですね。
ギルマロ:そうなんです。僕はもともと数学や化学が好きで、学生時代はオリンピックに出たり、プログラミングの世界大会に出たりしてました。大学から日本に来たんですけど、趣味がアメリカの音響デバイスを集めることで、個人輸入が本当に不便で…。「なんでこんなに面倒なんだろう?」って、ずっと思ってたんです。AIの知識もあったので、「これを技術で解決できないかな」と考えたのが始まりですね。最初は個人でサービスを開発してみて、これならいけるな、という手応えがあったので会社を作りました。
その視線は、もっと未来を見ているとか。
ギルマロ:ええ。僕、アントレプレナーシップ、つまり起業家精神って、20~30年後にはもう、なくなってると思っています。
え、起業家が、いなくなるんですか?
ギルマロ:はい。イノベーションとは、既存の技術やアイデアの新しい「組み合わせ」ですよね。今は人間がその組み合わせを考えていますが、いずれその役割もAIが担うようになる。人間の脳でできる以上、AIにできない理由はありません。
だからこそ、私たちの挑戦は単なるECサービスで終わるつもりはありません。5年後、買い物のインターフェースはウェブサイトやアプリではなく、「エージェント」になっているでしょう。「韓国のあれを買って」と頼めば、AIエージェントが全てを済ませてくれる。しかし、その裏側で実際にモノを運び、通関させる「物流」というハードウェアの部分は、汎用AIにはできません。
私たちは今からその「裏側」のプレイヤーになるための準備をしています。世界中に物流拠点を持ち、AIとロボティクスで効率化された通関・配送ネットワークを構築する。将来、どんなAIエージェントがフロントに立とうと、海外購買の実行部隊はSAZOしかいない。そういう世界を作るために、今はアプリという形でサービスを提供しています。
ICTスタートアップリーグに参加されたきっかけと、期待したことは何でしたか?
ギルマロ:説明会で「スポーツのようにリーグを作る」というコンセプトを聞き、非常に面白いと感じました。単なるピッチイベントではなく、スタートアップ同士が協力し、規制のような大きな課題にもアプローチしてくれる。私たちの事業は関税領域という特殊な分野なので、そうしたサポートに大きな期待を持って参加しました。
7億円超の大型調達に成功されましたが、リーグの支援は具体的にどう繋がりましたか?
ギルマロ:あらゆる面でプラスに働きました。特に大きかったのは4つです。
第一に「信頼性」です。私たちはBtoCサービスですし、代表が外国人ということもあり、最初は「よく分からないサービス」と思われがちです。しかし、総務省の事業であるICTスタートアップリーグに採択されたという事実は、お客様や取引先、特に銀行系の投資家からの信頼感が全然違いました。
第二に「資金調達の加速」です。調達活動の時期に、メンターの方から投資家へのアプローチ方法や市況感について具体的なアドバイスをいただいたことで、迷いなく動けました。もしリーグの支援がなければ、もっと時間がかかり、調達額や条件もこれほど有利なものにはなりませんでした。
第三に「事業提携と採用」です。リーグを通じてメディア露出が増えたことで、認知度が向上しました。その結果、日本の大手EC企業との提携が決まったり、採用活動で候補者にスカウトを送った際の返信率が格段に上がったりという効果がありました。
最後に「採択者との交流」です。同じようにAIに取り組む企業とサーバー代の話をしたり、海外で資金調達をした先輩から裏話を聞いたり、そうした横の繋がりから得られる情報は非常に貴重でした。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
ギルマロ:短期的にはサービスの対象国を拡大します。今年中には日本からの輸出を、来年には日韓だけでなくグローバルに展開する計画です。その先は、海外の物流企業をM&A(買収)し、私たちのAI・ロボティクス技術を導入することで、世界中にSAZOのネットワークを広げていきます。2035年には、全世界のどこからでも、どの国の物でもSAZOを通じて買える状態を目指します。その時、インターフェースはAIエージェントになっているかもしれませんが、その裏側は私たちが担っていきたいですね。
私は、大学を卒業せずにこの挑戦にフルコミットしました。周りからは「今じゃない」とも言われましたが、今回のAI革命は、ドットコムバブルなど過去の技術革命とは次元が違う、人間史における二度とないラストチャンスかもしれないと感じています。
そんな大きな変化の波の中で、私たちは「購買」という人間の根源的な欲望に関わる、最も大きな領域に挑んでいます。この壮大な挑戦に共感し、一緒に未来を作りたいという方がいれば、ぜひお話ししたいです。
編集後記
「海外のあの音響デバイスが欲しい」。創業者自身のそんな純粋な想いが、国境を越えるサービスの原点となった。SAZOは、その個人的な体験から生まれた課題解決への情熱を力に、ICTスタートアップリーグの支援という追い風を得て、大きな飛躍を遂げている。
7億円超という大型の資金調達は、その期待の大きさを物語る。AIが煩雑な手続きを担う一方で、物流拠点では一つ一つの荷物を丁寧に検品する。その先進性と堅実さを両立する姿勢が、多くのユーザーからの信頼を築いているのだろう。
SAZOが見据えるのは、単なる便利なサービスではない。世界中の「欲しい」という気持ちに応え、物理的な距離も言葉の壁も超えていく未来だ。彼らの挑戦によって、私たちの日常はもっと豊かに、世界はもっと身近になる。その未来の実現が、今から楽しみでならない。
■ICTスタートアップリーグ
総務省による「スタートアップ創出型萌芽的研究開発支援事業」を契機に2023年度からスタートした支援プログラムです。
ICTスタートアップリーグは4つの柱でスタートアップの支援を行います。
①研究開発費 / 伴走支援
最大2,000万円の研究開発費を補助金という形で提供されます。また、伴走支援ではリーグメンバーの選考に携わった選考評価委員は、選考後も寄り添い、成長を促進していく。選考評価委員が“絶対に採択したい”と評価した企業については、事業計画に対するアドバイスや成長機会の提供などを評価委員自身が継続的に支援する、まさに“推し活”的な支援体制が構築されています。
②発掘・育成
リーグメンバーの事業成長を促す学びや出会いの場を提供していきます。
また、これから起業を目指す人の発掘も展開し、裾野の拡大を目指します。
③競争&共創
スポーツリーグのようなポジティブな競争の場となっており、スタートアップはともに学び、切磋琢磨しあうなかで、本当に必要とする分の資金(最大2,000万円)を勝ち取っていく仕組みになっています。また選考評価委員によるセッションなど様々な機会を通じてリーグメンバー同士がコラボレーションして事業を拡大していく共創の場も提供しています。
④発信
リーグメンバーの取り組みをメディアと連携して発信します!事業を多くの人に知ってもらうことで、新たなマッチングとチャンスの場が広がることを目指します。
■関連するWEBサイト
SAZO
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株式会社SAZO
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株式会社SAZO(LEAGUE MEMBER)
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ICTスタートアップリーグ